食道静脈瘤、胃静脈瘤 のお話

2017/12/04

 今回は食道静脈瘤、胃静脈瘤のおはなしです、あまりなじみのない病気かもしれませんが、肝臓の疾患の
多かった昔は多い病気でもありました。病態としては肝硬変などにより肝臓に本来入るべき血流が、
入れなくなると血液の交通渋滞を引き起こし、門脈という血管の圧力上昇をきたします(門脈圧亢進症)。
そうするとさらに本来門脈に入るべき血流をもつその周囲の血管も血液がうっ滞して(食道や胃の静脈)
静脈瘤というものが形成(血液が貯まり血管が腫瘤様になること=食道静脈瘤)されます。例えると、
環状8号線(環八)が大渋滞をしていて周囲の井の頭通りや青梅街道までもが渋滞をしてしまっているような
状態になります。出血すると、貯まっていた血液が食道や胃に放出され、その出血量の多さから死亡する
こともある疾患です。原因としてはアルコール性肝硬変、B型肝硬変、C型肝硬変、自己免疫性肝炎、
原発性胆汁性胆管炎、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)、Budd-Chiar症候群等により起こることが多いです。
検査は胃カメラ(上部消化管内視鏡)、バリウム(上部消化管造影)によりわかりますが、胃カメラ(上部消化管
内視鏡)での検査の方が静脈瘤の程度までしっかり確認できるメリットはあります。またCTによる供血路の確認
も治療には大切なファクターの一つです。
 引き続き食道静脈瘤の治療についてです。出血している緊急内視鏡時に対する第一選択の治療法は
EVL(endoscopic variceal ligation:食道静脈瘤結紮術)であり出血点に内視鏡的に輪ゴムをかけて出血を
止める方法です。しかし緊急時には出血量の影響や重力方向からの出血では、出血点がわかりずらい場合もあり
S-B tube(Sengstaken-Blakemore tube)という食道全体と胃噴門部を圧迫止血することにより出血を止める
方法や、難易度は高いですが緊急EIS(endoscopic injectionsclerotherapy:内視鏡的硬化療法)をする場合
があります。EIS(endoscopic injection sclerotherapy:内視鏡的硬化療法)とは血管の硬化剤を内視鏡から
血管に向けて針で注入する治療法で多くは待機的に選択されております。待機的治療ではEISはEVLより再発率
という点では優れているという論文があるためEIS可能な施設では待機的にはEISが選択され、さらににAS
(1%aethoxysklerol)を併用注入を使用して再発率をさらに下げる試みをしている施設も多くあります。
当院では院長が食道静脈瘤治療を現在も金曜日午後に杏林大学医学部付属病院で行っていることもあり
診断相談や治療相談にものっておりますので食道静脈瘤をお持ちの方は是非ご相談ください。

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