食道癌 のお話

2017/09/09

 今回は食道癌についてです。食道は食道入口部から食道胃接合部までの約25cmほどの
管腔臓器であり粘膜(粘膜上皮、粘膜固有層、粘膜筋板、粘膜下層)、筋層、外膜で構成され
漿膜を持たないため食道癌は他の癌に比べて、周囲臓器に浸潤しやすいといわれております。
 食道癌は最新のがんの統計によると罹患者数は男性が約1万5千人
女性が約3000人と圧倒的に男性に多い病気であります。リスクファクターとしては一般的に
1、55歳以上の男性で
2、飲酒
3、喫煙
4、やせ型体系
5、野菜の摂取不足
6、アルコール代謝酵素(アルデヒド脱水素酵素2のヘテロ欠損、アルコール脱水素酵素ホモ
  低活性型)⇒簡易的に判断するにはコップ1杯で顔が赤くなる体質
7、咽頭癌の治療歴のある方
とっなており、ある文献によると1日当たり日本酒(ほかのお酒の場合は、日本酒をアルコール度
15%で換算してください)にして1合以上から食道がんのリスクが上がり、1合から2合で食道癌
リスクが2.6倍、2合以上4.6倍となっていて、非喫煙者に比べて喫煙者では3.7倍の食道癌発生
リスクが高いという結果があったようです。さらに別の文献では,1日1.5合以上の飲酒と喫煙で
飲酒、喫煙しない方に比べて癌の発生リスクが約30倍であったという研究結果もありますので
飲酒と喫煙の両方をしていらっしゃる方は注意が必要ですね。

引き続き食道癌の組織型や症状、診断についてです。
 食道癌の組織型は扁平上皮癌が約92%と圧倒的に多く,腺癌が約2%、そのほか悪性黒色腫、
類基底細胞癌、腺扁平上皮癌、小細胞癌など稀にがありますが一般的には食道癌というと
扁平上皮癌のことを指します。また食道癌に罹っている人は、同時性に約8%くらいの人が胃癌や
咽頭癌、頭頚部癌を合併していることがあるため治療前のCTや内視鏡での重複癌のチェックは必須です。
 食道癌の症状としては早期癌ではあまり症状はありませんが、進行してくると食べ物のつかえ感、
嚥下困難、胸やけ、背部痛、周囲臓器への浸潤があったりすると嗄声、咳、血痰などの症状が出る
場合があります。
 診断は拾い上げ等はバリウムでも可能ですが、癌が表層までにとどまるような早期癌を発見するのは、
バリウムではかなり熟練度により差があるようです。当然胃カメラ(上部消化管内視鏡)でも食道癌は
表層までに留まる早期癌を見つけるのは困難な時代もありましたが、現在は胃カメラ(上部消化管内視鏡)
もハイビジョン対応となり、オリンパスではNBIという早期食道癌の拾い上げに有意に有用なシステム
(フジフィルムからも同様のBLI)があります。いずれにしても食道癌全体では93%が胃カメラ
(上部消化管内視鏡),バリウム検査のいずれかで発見されておりますが、確定診断は胃カメラ
(上部消化管内視鏡)による組織生検が必要になります。

それでは食道癌の治療のお話です。(最新ガイドラインに沿ってお話をさせていただきます。)
 食道癌と診断されたらまずされるべきことは、まずは担当の先生に自分の癌のステージを決めて
もらうことが重要です。一般的にはどんな癌でもそうですが、癌と診断されて、治療法に直結するのは
ステージングになります。たとえばstageⅠの食道癌とstageⅣ食道癌ではまるで治療方針が違います。
CTで周囲のリンパ節の転移がないか?多臓器への直接浸潤がないか?遠隔臓器への転移がないかなどを
しっかりチェックして、孫子の兵法ではありませんが、敵を(癌を)知りて己(現代医学の治療法を)
をしれば・・・ということが肝要かと思います。
 また食道癌に関してはstage0-ⅠAなのかstageⅠAなのかの判断は、CTなどではわからず胃カメラで
(上部消化管内視鏡拡大機能付き、超音波内視鏡)わかることが多いです。(詳細は内視鏡成書に譲ります)
 stage0-ⅠAでは内視鏡治療がファーストチョイスとなります。また内視鏡での切除後に結果
stageⅠAであることがわかった症例に関しては追加で手術または放射線化学療法をすることが最新の
ガイドラインでも推奨されております。また内視鏡治療前からstageⅠA症例と考えられる場合には
手術、または放射線治療単独、放射線化学療法が推奨されます。

引き続き食道癌stageⅡ、Ⅲ(T4を除く)の治療です。基本的には
日本の多くの保険診療施設では食道癌診療ガイドラインに沿って治療していくことが多いです。
それはその治療をするための、確固たる科学的な証拠があるからであります。多くの研究結果を
専門家の先生方たちが吟味した上でのガイドラインで(指針)ありますので臨床医にとってはバイブル
みたいなものです。stageⅡ、Ⅲ(T4を除く)では、まず手術を受けられる体力や、呼吸機能、心機能
などがあることを耐術能があるといいますが、耐術能がある方は術前に化学療法をした上での手術が
推奨されております(ネオアジュバンド療法)。また術後にリンパ節転移が確認された場合には
術後化学療法(アジュバンド療法)が推奨されております。また耐術能がなくて化学放射線療法
が可能な方の場合には、根治目的の化学放射線療法が選択されます。また耐術能も化学放射線療法
も受けるほどの体力の無い方は(例えば103才で寝たきりの方など)化学療法のみをやる、または
Best supportive careを行っていくという方針が推奨されております。
 
最後に食道癌stageⅣ(一部Ⅲも)の治療法についてです。
食道癌のstageⅣはstageⅣaとstageⅣbに分けられます。切除不能食道癌で、多臓器への
遠隔転移のないのがstageⅣaで、切除不能食道癌で、多臓器への遠隔転移のある場合をstageⅣbと
最新のガイドラインでは分けられております。stageⅢの(T4)とⅣaで生活が自立されている方
(PS2まで)は根治的化学放射線療法が第一選択となっております。また生活の半分以上をベットで
生活している方は放射線治療または前回の食道癌のお話④でもでてきたBSC(BestSupportive Care)
の適応になります。stageⅣbでは生活の自立している方は(PS2以上の方)、化学療法を行った群と
行わなかった群では、有意に生存期間が行った群のほうが長く、化学療法を行うことをガイドライン上も
推奨しております。しかし生活の半分以上がベット上(PS3以上)の生活の方はBSC(Best Supportive
Care)が望ましいとされております。以上が大まかな食道癌の疫学、リスクファクター、診断や治療方針
となりましたがいかがだったでしょうか?早期発見早期治療では完治する癌でもありますので、
リスクファクターが示すようにタバコ、アルコールを嗜好されている方で55歳以上の男性は内視鏡を
たまにはしてみてもよいかもですね。

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